「蒼衣。よかったな。いい恋してるじゃねーか。やさしい恋なんて普通じゃいえないぞ」


先生が私の頭をぽんと触りながら言った。


あっ、先生ノート読んでくれたんだ。


『…うん』


峻太が私達を見ていることに気がついた。



「蒼衣って宮ゴリのことになるとすごくうれしそうだよな」そんな目で見つめている。


ふと、昨日の出来事を思い出した。



でも、峻太が私のことを好きだったなんて…



「恋ってさ、何歳になっても悩んだりするんだよな。相手のことを思ってるつもりでもそれが相手に伝わらなかったり…相手のことを考えるばかりじゃきっとダメなんだろうな。自分のことも大事に思わないと、自分が見えないと、相手を傷つけてしまうこともあるんだよ…な、きっと」



そういって先生は少しさみしそうな表情で空を見つめていた。


先生がそっと言った言葉は、まるで私の心を知っているように思えた。



「蒼衣は鈍いから…」よく唯から言われる言葉だけどホントに鈍いのかもしれない。


自分のことしか考えてなかった。



自分は思いを言うことができない、自分だけ辛い恋だと思い悩んでいた。



でも、そんな中途半端な気持ちが仁さんや峻太を傷つけていたことに気がついた。


ごめんね、峻太。ごめんなさい、仁さん。



私は峻太の視線と自分のことを考えるので精一杯で、先生の表情がどうしてさみしそうだったかまで考える余裕がなかった。