私のことが好き?何を言ってるの?峻太には彼女が…
そう思ったとき私はハッとした。
…同じだ。私と同じ思い。
折れてしまうんじゃないかと思うほど峻太は私を強く抱きしめた。
『…峻太、い・いたい…』
それでもまだ峻太は離してくれなかった。
この痛さは峻太の心の痛さ。そして、私の心の痛さだ。
「ごめん。もう少しだけこのまま…で…」
峻太の言葉に、私は静かに頷いた。
心の傷をお互いが癒しあうように二人で強く強く抱きしめあった。
「忘れた。もう忘れるよ。映画の話も、今のことも…蒼衣への思いも…」
峻太は小さな声でそういうと私から離れた。
『しゅんた…』
「じゃあな」
いつものように手をあげて別れる峻太。
私は何か言いたかったけれど、何を言いたいのかも、何を言えばよいのかもわからなかった。
一人で自転車を転がしながら、私はこれからどこに向かうんだろうという言いようのない
不安感が襲ってくる。
自分だけ知らない場所に迷い込んでしまったような孤独とさみしさだけが心に残った。