『もしもし…さっき電話ごめん…お風呂に入っていて』


「あれ、ちょっと鼻声じゃん。風邪気味?」


いつものやさしい仁さんの声。


『うん、ちょっと。でも大丈夫』


さっきの涙をごまかす私。



「あのさ、実は明日のドライブ行けなくなりそうなんだ。ごめん」


『…どうしたの?』


「ちょっとね、急な用事が入ってさ。これからちょっと忙しくなりそうで、連絡もできないかも」



『ううん』


「蒼ちゃん、俺のこと好き?」



『えっ…うん。仁さんのこと…好きだよ。でも、どうしたのいきなり』



「しばらく会えないから、その分聞いておきたくて。じゃあ、俺の作るお菓子は…」


『仁さんのスイーツ大好き。だって食べると仁さんの優しさや元気がもらえるんだもん』



「よし。蒼ちゃんの声が聞けたから、頑張れそうだぜ。やっぱ、会えないのは辛いけど。
俺の予定が終わったら、絶対どっか行こうね。プラン考えといて、おいしいケーキ屋情報とか。うーん、蒼ちゃんと話してるとワクワクしてくるなぁ。でもこれからしばらく会えないのはすごく残念だけど」


『もぅ、仁さん子供みたい』


「うん、だって大好きな人と未来のことを話すってすげぇことじゃん。幸せ感じるよな、なーんて。じゃあ、風邪気をつけてね」



『うん。おやすみ』



電話を切ってからもまだ笑顔でいる私がいた。


自分の気持ちを隠したり、嘘をついたりするんじゃなくてもいいと思えた。


仁さんと一緒にいることに安らぎを感じるのも私の気持ち。


先生のことを好きなのも私の気持ち。


自分の気持ちに真っ直ぐに向き合うことで自分が見えてくる。



先生の言っていたことが分かった気がする。


お互いの思いを確かめあえる恋。私もそんな恋がしたいと心から思った。