「痛っ………!はーちゃん急に止まらないでよぉ……」
ううっ……痛いよ。
一緒に歩いていたはーちゃんが立ち止まるから、はーちゃんの背中に鼻をぶつけてしまった。
もぉおおって……
「はーちゃ……」
「しっ!」
「え?なに」
はーちゃんは曲がり角の壁に肩をくっつけて、その向こうにある下駄箱を見ていた。
な……なぁに?
はーちゃん、どーしたの?
静かな校内に雨音が響いて、それに混じって誰かの声が聞こえた。
「………うから……だめ…」
女の子の声?
違う……女の子って表現はおかしいかもしれない。
どちらかと言えば“大人の女の人”の声だった。
あたしは、はーちゃんの隣からこっそり顔を出して、その先に視線をやる。