「いや、あいつが悪いんだ!俺がなんでどくんだ!!!」
一瞬だけ穏やかな表情を見せた男だったが、絋佳の言葉を聞くなり元に戻ってしまった。
とりもつしまもない男に呆れているとギャラリーから50才を過ぎた頃の男の人が1人、前に出てきた。
「おじさんもいい年なんだから、若い娘さんを困らせちゃいけないよ。とりあえず気持ちはわかったから退いていただけないでしょうかね?」
若い絋佳とは違い、男は年の功なのか巧みに自転車男の説得に入った。
しばらく話していると、それまでガンとして離さなかった自転車から手を離したのだった。