「…知ってるの?」

そう言う先生の目は悲しそうだった。

あたしは頷く。

「…よく、知ってますよ」



だって。

あたしの本当のパパだもん。



「先生」

今度はあたしが質問をする。

「じゃあ、平野 真由って知ってます?」

先生の目が丸くなる。

「…どうしてその名前を?」

あまりにも驚いているので笑いそうになる。

「あたしの、ママですよ」



そう言ってあたしは屋上の扉に向かった。



入学してから今まで。

ママと一緒に学校へ来た事がない。

来ることがあればパパが来ていたから。

先生がママを知らなくても当然だった。