「…むっちゃん」

奏さんが歩きながらあたしに話し掛ける。

「お兄ちゃんが離れる事、辛くない?」

「何の話?」

あたしは立ち止まって奏さんを見つめた。

「…聞いてないの?」

奏さんは驚いた様子であたしを見つめた。

「光さんがどうかしたの?」

「…お兄ちゃん、今シーズンが終わったらお店辞めて大阪に戻ってくるって」

「…えっ?」



そんな話、一切聞いていない。