ユタと別れて、一人家路を歩いてた。
と、後ろから翔が走って追いついて来た。
「夢子、待ってよぉ」
「あれ? 翔、先帰ったんじゃなかったの?」
「うん、帰ろうとしたらさ、陸上部の顧問に呼ばれて」
「なに?」
「明日の部活で百と千五百のタイム計って、記録良かったら、五月の大会に出場させて貰えるってさ」
「翔は実績あるもんね」
「まぁ、チャンスは平等にある訳だけどね」
「って?」
「百地にもチャンスはあるってこと。明日の記録次第でさ」
「そっか、翔だけ特別って訳にはいかないもんね」
「そうさ」
「百地にも知らせてあげなよ」
「勿論!」
そう言った翔の瞳には、一点の曇りもなかった。