あたしが教室で、突然、百地にハグしても、驚いたのは当の本人百地だけで、みんなサラリとかわしていた。
わかってなかったのはあたし自身と、あたしのわからない心を読んでた百地だけ。
みんなは何故だか、あたしの気持ちをわかってたみたい。
ユタだけは、
「夢子って、意外と積極的。
僕も見習おうかな。
突然、ハグ!って、インパクトあるよ」
って、放課後の文芸部の部室で、真剣な顔であたしに囁いた。
「何言ってんの? 翔、引くよ」
「えっ、そうかな、ほんとに、そうかな。
僕は今、すっかりその気だったのに」
「まぁ、ちょっと翔の驚く顔、見てみたい気はするけどね」
「夢子、面白がってない? 僕は真剣なのに」
ハグしたって、あたしと百地の関係は変わらない。
いつの間にか、いつもの平穏な日々が戻っていた。