なんとなくたどり着いた中庭の、あの桜の樹の下で、あたしは小さく膝を抱えてうずくまっていた。


逃げたかったわけじゃない。


でも、

だって、

やっぱり、

無理。


好きって意識したら、あんまり恥ずかし過ぎて、百地に全てを見透かされてるのが、いたたまれない。



あたし、滑稽だよね。

笑っちゃうよね。



子供なんだもん、仕方ない。

自分の恋心に潰されそうだよ。

膝に顔をうずめ、やっと気持ちが落ち着いてきた頃、

「夢子」と呼ぶ翔の声に顔を上げた。


翔はそのまま何事もなかったように、自然にあたしの隣りに腰を下ろして、やっぱりあたしと同じように膝を抱えて丸くなった。