思いつめたような、緊迫した表情の百地がそこにいた。
「忍……」
あたしは思わず百地の名を口にした。
ガタっと、音を立て、百地が椅子から立ち上がった。
「夢子、ちょっときて……」
「えっ、どうしたの、もうホームルーム始まるよ……」
あたしの声が、空しく響いた。
「百地、夢子をどこへ……」
翔の声にも耳に入らないほど、百地の顔は険しく強張って、あたしの腕を容赦なく掴むと、引きずるように教室の外へと連れ出した。
百地は果たして、行くあてがあるのだろうか?
ずんずんと進むその足取りは、何かから夢中で逃げているようで、その先が見えなくて、あたしは急に不安になって声を上げた。
「どこへ行くの?
あたし、怖いよ……」