通された先は、無用に広い座敷だった。
右の廊下側の障子を通して光が漏れ、部屋の中を明るく保っていた。
が、どうも普通の家と勝手が違うのだ。
必死に自分の置かれた状況を把握しようと辺りを見渡した。
何処を見渡しても照明がない。
もしかして、この家は夜は闇?
電気来てないとか、今の時代有り得るわけ?
蝋燭灯すとか、まさか懐中電灯で過ごすとか?
あたしは、更に部屋の中を観察した。
二十畳ほどの広さの座敷が二間つながった奥座敷。
奥の部屋の床の間を背にして、恐らくこれからあたしが身に纏うであろう衣装が掲げられていた。
白地に赤い糸で何か模様が施された見事な衣装。
渦巻く波のような、吹き荒れる風のような、流れる動きのある文様。
引き込まれるような、不思議な感覚。
目の前が揺らめいた。
そんなあたしの視界に、奥の襖が音もなく開き、ママが姿を現した。