次の朝、何やら慌しい喧騒の中で目覚めた。




「長、風ちゃんと心波の子が来とるってのは、本当ですか?」


藤林の家に押しかけて来ているのは、どうやら根来の村の人々のようだった。


「夏休みだでのう、遊びに来とるんじゃ、そげん驚くことはなかろうて」

「だども、今まで一度だって……」

「来れんわけも、わかろうて……」

「……兎に角、わしらにも会わせてもらえんかのう」


そうしつこく食い下がって、長に詰め寄っているのは、きっと、毎年欠かさず、母に年賀状を送ってくれる村の人達なんだろうと思った。


「まだぐっすり寝てるでのう」


長は、一歩たりとて、みんなを中に入れる気はなさそうだ。


「じゃ、わしら戸隠の家で、昼餉の用意さして待っとりますから、二人をよこして下さい」


玄関に立ちはだかる長に、そう言い残すと、人々は帰って行った。