「翔、着いて早々悪いがのう、裏の畑に行って野菜をみつくろうてきてもらえんか」
「おう」
翔はひと言頷くと、開け放たれた玄関の脇から、慣れた手つきで持ち手の付いた竹籠を掴むと歩き出した。
「夢子もくる? 荷物運びは百地に任してさ」
振り向いた翔が、あたしを呼んだ。
「うん」
小さく頷いて、翔の後を追った。
早くこの場から居なくなりたかった。
何も言わない百地の視線が熱く苦しかったから。
竹林の外れから、家の裏山に沿って小さな小路が続いていた。
その小路をゆっくりと筒ら折に登って行く。
あたしは、ただひたすらに翔の背を見つめながら歩いていた。
「夢子? 長の言ったこと、気にしてる?」
「えっ?」
何?
翔も眠っていなかった?
聞いてたの?