「夢子ってさ、もしかして水難の相があるんじゃない?」


旅館の部屋の縁側に座って、甘いスイカを頬張りながら、紫苑先輩が真面目な顔で聞いてきた。

「わかんない。確かに泳ぎは苦手だけど……」

「こう立て続けに、水に関わる災難に会うと、そう思わざるを得ないって感じじゃない?」

「はぁ……」

「ここは夢子の身の安全を最優先ってことで、合宿は早々に引き上げる?」

サラリと口にされた紫苑先輩の提案に、あたしと翔は思わず顔を見合わせた。

「だって、次、何が起こるか分かんないし、夢子に何かあったら、あたし責任感じちゃうよ」

「先輩はそれでいいの? この合宿を一番楽しみにしてたのは、紫苑先輩でしょ?」

「そうだけど、もう十分楽しかったし。みんなとも仲良くなれたし。あたし的には満足なんだ」

スイカを頬張る、そのさっぱりとした笑顔に、嘘偽りはないように思えた。


でも、きっと、満足しない奴が若干一人。


あたしの頭には、ユタのガッカリする顔が浮かんでいた。