あたしは小太郎先生に抱きかかえられて、浜から続く別荘への階段を上がっていた。
だって、いくら百地が年の割に大きいといっても所詮は中学生。
あたしを抱いてこの崖を上がるには力不足だったのだ。
「君が何故、それほどまでにみんなに守られるのか、その訳を是非知りたいものだな」
あたしを穴の開くほどじっと見つめるその目には、あからさまな好奇心がみなぎっていた。
「それは、あたしがいつまでも危なっかしい子供だからです」
ちょっとムッとして、あたしは答えた。
そもそも浮き輪をもっていながら溺れるなんて醜態をさらしたばかりなのだ。
「本当にそれだけかな?」
「他に理由なんてないと思います。
翔は何でもできるスーパー少女だし、百地君だってそう。
あたしのすることなすこと、危なっかしくて見てられないんだと思います」
「そうか、そういう考え方も一理あるかな。
つまり……、夢子ちゃんは、守ってあげたくなるタイプってことかな。
うちの紫苑にも、そういうところがあれば、もう少し違っていたのかもしれないなぁ。
あの子はなんでも我慢して、強がってしまうとこがあるから」