あれから翔はずっと無言で、あたしの手を握って歩き続けた。
たどり着いた翔の家。
店の入り口から中を覗いた。
お客がいたら、裏玄関から入るのがこの家の決まりごと。
客商売だからね。
翔がお客がいないのを慎重に確認してドアを開けた。
「ただいまぁ~」
「おう、翔、夢子ちゃん、おかえりぃ~
入学式はどうだったかい?」
「普通」
翔が素っ気無く答える。
「普通に良かったってことかな?」
翔はいつも素っ気ない。
でも、おじ様はめげずに話を続けるんだ。
「まぁ、そんなとこ」
「1年は5クラスだったんですけど、翔と同じクラスになりました」
「ほう、そりゃ安心だ」
「でさ、親父?」
翔はおじ様との会話なんておかまなしだ。
「クラスに百地って奴がいてさ……根来の奴かも……」
「百地忍くんって言うんです」
ま、それはあたしの一番知りたいことでもある訳で。
あたし達二人の尋常ならぬ雰囲気を察したかのように、
「ももちしのぶ……」
おじ様の目つきが厳しく変わった。