ピ、ピ、ピー



長いホイッスルが吹かれ、試合が終わる。


結果は3―2で勝利。

これで3日後の決勝に進める。


次の相手は去年の優勝校。

いつもベスト4には入る、名門中の名門。




選手たちはすぐに荷物をまとめて、ベンチをあとにする。

そして宿舎に帰ると、今日出場した選手たちのマッサージ。
彼はまだ1試合も出ていない。


人数が少ないから、いつもより丁寧にマッサージをする。



そして終わった頃にはもう夕食。



そんな慌ただしい生活だ。







その日の夜。

私は星を見に、外に出た。


すると、どこからかセミの声に混じってボールを蹴る音がする。

よく耳を澄ませると駐車場の方からだった。


もしかして…




やっぱり…

駐車場へ行くと、彼がボールと戯れていた。



もともとサッカーのセンスがある彼は、日に日に成長していくのが私にもわかった。



狭い車と車の間を器用にボールを蹴りながら進んで行く…




ふと目についた彼の右膝…


そこにはまだ、生々しい傷跡が残っていた。