「は…?」

突拍子もない質問に、私は間抜けな声しか出せなかった。


「だから、大学行くのか就職するのか。」


「あぁ、とりあえず大学で勉強する。」


「やっぱりそっか。」


「何、急に。」




彼はしばらくの沈黙のあと、話し始めた。


「俺はさ高3で、怪我でまだ1試合も出てなくて。
だけどチームの中には、もう進む道が決まってる奴もいる。


サッカーばっかりで、勉強なんてほとんどしてないから、俺にはサッカーしかないんだよ。

だからさ、最後のこのトーナメントにかけてんだ。
もしこの大会で自分の結果を残せば、道ができるかもしれない。


俺でも内心、かなり焦ってんだよ。」



そう言って、彼はまた練習を始めた。


彼の他に推薦で入ってきた人はたくさんいる。
そして、実際、Jリーグのユースチームからオファーが来てる選手も何人かいる。

だけど、推薦で入った人が、必ず何処かのチームに行けるわけじゃない。
試合に出て、ちゃんとした成績を残さないと、この先の道がないんだ。



彼は、試合にも出ていないのだから、そんなチームの目にとまるわけもなく、まだ道が決まっていない。