「坂木はっ!!
そんな風に諦めるような人間じゃないと思ってた!!

いつも誰よりも早く学校に来て、誰よりも長くボールを蹴って、誰よりも努力して!
何があっても諦める事だけはしない人だと思ってたっ!!

それは…
それは私の思いこみだったの…?」


私は流れる涙も拭わずに、彼の胸を叩いた。





「そーなんじゃねぇの?」



「え…?」



「俺はそんなに出来た人間でもなければ、強い人間でもない。

何度逃げだそうと思ったか知らないだろ。
この3年間がどれだけ地獄だったか、お前にわかるかよ!!
お前なんかにわかってたまるか!

親がエリートで、その才能を自分も受け継いで、何もかも揃った環境で生きてきた奴に、俺の気持ちがわかるわけないだろ。

周りから期待されて、されまくって、その期待を裏切った時、周りがどうなるかわかるか?
親も親じゃなくなるんだ。
みんながみんな俺を責めて、冷たい目で見てくるんだ。

そんな風に見られてきた俺の気持ちがわかるのかよ!!」


彼の目からは止めどなく涙が流れていた。




「俺はただサッカーが楽しければそれで良かったのに!!
平凡な家に生まれたせいで、余計にプレッシャーかけられて!
親も、親戚も、近所のおばさんも、
友達も、先生も、監督も!!
だんだん期待が重くなって、いつのまにかサッカーが苦痛でしょうがなかった。

怪我した時の親の顔が今でも夢に出てくるんだよっ!!
いつでも俺につきまとって、逃げる事を許してくれなかった…

誰にもこんな弱音、吐けなくて…
ずっと自分が悪いんだって、自分のせいで親があんな顔するんだって……」