目の前には黒い服があって、頭と背中には誰かの手があった。


「初対面じゃねぇよ。」


上から降ってきた声は、今一番憎い人の声で、やっとあいつに抱きしめられてるんだって気がついた。


「何すんっ…!!」


私が反抗する前にあいつは話し始めた。



「初対面じゃない。
10年前の4月に1回会ってる。」



「は…?」


「俺の親は手嶋 大輝だ。」


「手嶋…大輝っ!!」



手嶋大輝っていうのは、うちのお父さんがいつも看てる選手のうちの一人。

一回だけ、私がいるときにジムに来たっけな…





そして、その時、手嶋大輝さんの後ろに隠れていた男の子がいたような、いなかったような…



「あぁぁぁぁぁぁっ!!」