そんな…そんなの……。

なんで……なんで?



「あの父親は、お前の母親が再婚した相手だ。
だから実の父親ではない。」



「は、母は…母は実の母なのですか?」



「そうだ。
あの父親と再婚する前に、越間とヤってお前を生んだ。」



生々しい話……。


私は自分のことなのに、他人事のように思ってた。

いや、思いたかっただけ。
こんな生々しい、ややこしい話を自分のことと思いたくなかった。



「俺はその越間の復讐にお前を使った。
越間が戻ってきた時に実の娘がこんな奴隷になってるなんて、
きっと思いもしないだろうからな。
あの父親には金をやったが…今はもう死んでるだろうな。」



使われただけの私………。


私は……必要とされて買われたんじゃないんだ…。


私………
なんだかんだ云ってさ…
必要とされてるからここにいるって思って頑張ったんだよ……


“お前がいなきゃダメだ”って言われる日を待って……
耐えてきたのに…………。


あの…父だって……
私の実の父じゃなかったけど…
ここまで育ててくれて………


なのに、簡単に…“死んでるだろうな。”なんて………


しかも実の父が…
安田の大切な人を殺した…犯人なんて………



私は絶望に包まれ、倉庫から脱走した。