て、おいおい。今はときめいてる場合ではなく、


「密着しすぎなんですけど……」


整った顔立ちが、ドアップで俺の瞳に焼き付いてます。


「私は翼君とは初対面ですわよ。嘘じゃないわ、ほんとよ」


「じゃあ、なんで俺の名前がわかった」


「あっ」


翼の口角が、器用に右端だけ上がった。


口元に笑みを浮かべながら、さらに接近する顔。


突き刺さる笑みを含まない眼差し。


鼻につく香水の匂い。


微かに触れる翼の髪。


それらが束となって、不吉な予感のブーケとなる。