深く柄が入ってしまい、これでもかというくらい流れた血。



両親も兄貴も出掛けていて当時の俺は応急処置も助けに呼ぶことは出来ないくらい混乱していて、死ぬんじゃないかと本気で思ったけど、処置が早かったおかげで感染症などになれなくて済んだんだ。


そう、翼のおかげで。


「その傷、翼君が付けちゃったんだよね」


「嗚呼、台所にあったナイフで翼がふざけて振り回したら、たまたまな。すぐに翼が処置したから大事にはならなかったけど」


「翼君は今でもお姉ちゃんに申し訳ないと思ってるよ。だから保健室でお姉ちゃんを見掛けた時、記憶が呼び起こされたんだよ」


「保健室?」


「うん、初日に保健室に運ばれたでしょ? 翼君は保健室でサボろうとしてたらお姉ちゃん達をたまたま見かけてね。引き金を引いたのは、二日目の出来事だけどね」


二日目の出来事。


あの時翼は、俺のある一点を見つめて動きを停止させた。