混乱しきった俺を察してか、少し間を置き大翔が説明を始めた。
パラレルワールドの件を。
「翼君の記憶からお姉ちゃんが完全に消え去ってないことは前に説明したよね?」
黙って頷く。
「後から分かったことなんだけど、翼君はお姉ちゃんの正体を見破ってたんだ」
「え?」
「お姉ちゃんの右手の傷を発見してね」
そういうと、大翔は俺の右手に視線をぶつけた。
それに答えるように掌を反す。
小さくて、しかも親指の付け根に付いた傷痕だから、こうして意図的に見せびらかすようにしなきゃ分からないこの古傷。
鮮明に蘇る幼き記憶。
ふざけてナイフで遊んでたら、誤って切り付けてしまったんだっけ。