着替えが入ってるから行こうと、さっさと踵を返す大翔を静止させ、その鞄を眼前に突き出した。


「東京ってなんだよ? あんな紙じゃわけわかんねえよ!」


「……馬鹿?」


人を見下し、冷めた目つきで俺を見据える。


「この紙に書いてあったでしょ、『新人タレント発掘大作戦!!』って」


そう言われとみると、そんなことが書いてあった気がする。


だが、それがどうだというのだ。俺にテレビ業界に進出しろと言いたいのか。


だとしたら無謀だな、アホだな。


つい最近まで男だった俺が、娘をタレントにするために、惜しみなく金と労力を注ぎ込み、徹底した英才教育を施した親バカの子供に勝てるはずがない。


「お姉ちゃんにはタレントになってもらうからね」


ほらな、きたよ。


これだから、バリバリのYUTORI世代は困るぜ。