待ち合わせのドトールの前にはもう二人が待っていた。
ゆきなの隣には明るい茶髪をお姫様の様に捲いた女の子が立っている。
僕らに気が付くとゆきなは軽く手を振った。
「ごめんごめん、待った?」
「ホントいきなりでゴメンね」
ギンがあまりにも軽く謝るので、僕は少しドキドキしながらゆきなに謝った。
「全然大丈夫ですよ」
「ちょっと、超カッコ良くない?」
友達のほうはギンを見つめながら小声でゆきなに耳打ちしている。こんな時僕は自分がいたたまれない気持ちになってしまう。
「この子、キクエちゃん」
「ちょっと、やめてよユッキー」
見た目とは裏腹に古風な名前の友達は、照れながら言った。
「キクエちゃんかあ、キクだから...デイジー!あれなんか違うか?」
「デイジーは雛菊だよ」僕は一応指摘しておいた。
「まあいいや、デイジーちゃんで」
「うれしい...」
それでいいのか!?僕は戸惑いながらゆきなを見ると彼女は嬉しそうに微笑んでいた。

ドトールで少し話をして、近くのゲームセンターでプリクラを撮って、僕らは南に向かって車を走らせていた。
「海を見に行こう」ギンがそう言ったからだ。
「日が暮れる前に間に合うのか?」
「大丈夫だよ、もうすぐだ」
少し日がかげり出し、ギンのバンの中はオレンジ色に染まりつつあった。
「海超楽しみー」
デイジーは嬉しそうにギンに話しかけている。
ゆきなは流れる風景を眺めている。
僕は、オレンジに染まろゆきなの横顔に見とれていた。