「ちょっとケンちゃん! その刺身オレのだって!」
「いやいや、だからオレが言ってるのは刺身がどうのじゃなくて、高田がハッスルでブレイクしちゃったって事でさ」
「いや! そんな話してなかっただろって!」
ライブが終わると、僕らはいつもの様に市内の居酒屋チェーンで食事をしていた。
僕の向かい側では、ドラムのギンとベースのケンが噛み合ない会話を続けていた。
いつも通りケンはビール2杯目で酔っ払っていた。
「このやり取り大好物だわ」
ギターでリーダーの巧さんは満面の笑みで二人のやり取りを眺めている。
僕は、注文したモスコミュールが届かない事が気になっていた。