スタジオに入るとギターを弾いていた男は、僕らに気づくと気まずそうに微笑んだ。
「巧です。 よろしくね」
ギブソンのレスポールのボリュームを絞りながら、
巧さんは簡単に自己紹介をすると僕と握手をした。
フランネルのシャツに人なつこそうな笑顔。
小柄な巧さんにはレスポールが凄く大きく感じた。
「巧さん、オレらガレージ・ロックやるんだからランディー・ローズは無いわ」
ギンがドラムセットに腰掛けながら言った。
「オレ、IRON MAIDENとか好きですよ」
僕が言うと巧さんは真顔でギンに向き直り
「やっぱ、オレらメタルやるか」と言った。
ギンが、はいはいと受け流すと、巧さんはおもむろにレスポールをかき鳴らした。