「なんすか?」

先に答えたのは彩斗。

「これ、落としたぞ?」

そう、差し出されたのは
何故かポケットの中に入れたさっきの手紙。

亜美ちゃんから
彩斗へ贈られた、手紙。

「すいません…ッ…。」

慌ててそれを受け取り、
再びポケットに入れる。

彩斗に見られてないか、
彩斗に気づかれていないか、
不安でいっぱいになった。


車の中に乗り込む。

少しの間の沈黙。


エンジンをかける音が、ハッキリと聞こえ
いつものHip-Hopがうるさかった。


「なんでお前が持ってんの?」

…悪い予感は、みごとに的中。
冷や汗が流れる感覚を
初めて味わった。

言い訳なんか通じない気がして。
言い訳をすればするほど、
怒られるような気がして…

「これ、元カノの手紙…?
気になって読んじゃってさ。」

引きつった無理矢理の笑顔で、
誤魔化そうとした。