「本当は?」

低い声。
彩斗のお父さんに声が似てた。

「本当に…、会ってない。」

彩斗の体制が変わる。
完全に私のほうを見ている。

「嘘ってさ?すぐバレんだよ?」

「嘘なんか、ついてな―」

唇が重なった。
でも、優しい幸せなキスじゃない。
乱暴で、悲しいキス。

「ふ…ッ…んぅ…」

涙が落ちる。
声が漏れる。

苦しかった。

信じてもらえないことが、
寂しくて悲しかった。


「可愛い。
なぁ?お前、一生俺のもんだよ。」

力いっぱい私を抱きしめる。

その手が、震えてた。

「ん…。」

再び、零れそうな涙を
必死で堪えて、抱きしめられながら笑う。


心の中のモヤモヤは
相変わらず消えなかったけど、
彩斗が彩斗で居てくれて
本当に良かった。

別れるなんて、絶対嫌だもん…