エレベーターがあるのに、
待つ時間さえ私を焦らせるから
自転車の所為でフラフラな足で
一生懸命階段を駆け上がる。

3階につくまでに、
何回か転びそうになった。


ピンポーン…


虚しい音が響く。


私、何やってんだろ―

一瞬だけ我に返る自分が居た。



「上がれ。」

インターホンから、声が聞こえる。
確かに大好きな人の声なのに
今は、それが怖かった。

重たそうなドアは
意外にも簡単に開いてしまい、
目の前には眉間にシワを寄せる彩斗。

何を、どうしたらいいのか
全く分からない私は、
彩斗の顔を見れなかった。


「こっち、来て。」

いつものリビングじゃなく、
開けたことの無い扉を指す。

「え…?」

「いいから、早く行けよ!!!」

面倒臭そうな。
不機嫌な声が響く。

怖くて、ただ恐怖でいっぱいで。

何かされるって、嫌な予感があったけど
でも、彼に逆らうことが出来なかった。

逆らったら何されるか、
分かったもんじゃないもの。