彩斗のお父さんに会って、
改めて自分の幸せを実感した。

別に彩斗のお父さんが、
特別悪い人には見えなかったんだけど
私にはやっぱり平凡が似合ってる気がして。

彩斗との世界の差は、
ますます感じるはめになったけど
私ね?
会えて良かった。って今なら思えるよ。



ゆっくりと車が発進する。

訳の分からない洋楽のHip-Hopは
沈黙の間に、
初めの曲に戻ったみたいだ。


「ねぇ、彩斗。
弘樹先輩のとこ、居ちゃ駄目…?」

気になってた
さっきの一部の会話。

「そうじゃねぇ。
お前の居場所はあそこって知ってるし。
でも、まぁ…色々あんだよ。」

「色々…は、聞かない方がいい?」

「出来れば、な。」

本当は聞こうと思った。
今知ってる事実よりも危険な事が
これから起こる場所であるなら、
私は多分行かないから。

でも、彩斗の顔があまりにも曇るから
…寂しそうに笑うから
私はそれ以上聞くことが出来なかった。



彩斗のことをお構いなしに、
聞いてしまえば私は
後々悲しむことなんか
決して無かったはずなのに…ね。