薬とか、確かに出回ってるけど
私はプッシャーじゃないし
ノルマなんて面倒なものも無い。

だけど彩斗は
そういう世界で生きているんだ。

「粒だけにならないんすかね?」

「やー、なんねぇだろ。」

彩斗が八重歯を見せて笑ってた。



しばらくして、
彩斗は私のところへ戻ってきた。

美月と話していた私の手を、
思いっきり掴む。

「痛ッ…」

「んな強くねぇだろ。行くぞ。」

「行くぞ」って…
彩斗が話し込んでたんじゃん。

何だか少しムカついた。


人で溢れかえっていて、
いくらギュウギュウでも
彩斗が通る道を皆あける。

それを何食わぬ顔で通る彩斗は、
やっぱり凄い人だと実感させた。


「あ、そうだ。言っとくわ。」

玄関付近で立ち止まり、
私のことを抱き寄せる。

「コイツ俺の女やで、
手ぇ出したらマジ殺すでなー。」

大きな声でそういうと
見せ付けるかのように私と唇を重ねた。