「何?」
「マジで帰んの?」
「別に関係無いじゃん。」
新品の煙草を、
1本だけ取り出して火をつける。
ノアール独特の臭いに落ち着ける私。
「…送る。俺、車だし?」
「はい?いいよ、別に。
てか暗くないし、帰れる。」
「いいから来い。」
男ってこういう時、ズルイ。
腕を掴んじゃえば
力づくにでも引っ張り込めるもん。
引っ張られて、連れてかれたのは
勿体無いほどヤン車に改造された
BMWの目の前だった。
「何?ヤン車?」
ヤン車を見るのは初めてじゃなく、
今まで見て来たけど
BMWでやってる人って初めて。
「は?VIP車だし。
間違えんな。」
「はいはい。」
ヤン車とVIP車の違いが分からない。
「前…だよね、やっぱ。」
呟いてみたけど、
彼は完璧無視をして
運転席に乗り込んだ。
今、帰っちゃえば
きっと何も無く済んだのにね?
でも私は何も考えず、
助手席に乗った。