彼は骨が出て、
ゴツゴツした手で煙草を取ると
皆に了承も得ずに吸い始める。

…当時、私の嫌いだったマイセンを。


「マイセン、苦くない?」

「は?好みだろ。」

「私絶対無理だし。
つか、ノアールしかヤダ。」

ポケットの中のノアールと取り出し、
彼の目の前にポンッと置く。

「ノアールとか、お子様だな。」

貶されるのが1番嫌いな私。
でも、この時は全く嫌じゃなかった。

…だって、彼。
八重歯見せて笑ったもん。

何だか嬉しくて、
勝手に舞い上がったら
「うるさい女だな。」って怒られたけど。


美月もアズも、
もう出来上がっちゃってて
私と目の前の彼が残りだ。

「んー、もう帰ろっかな…。」

グルリと一周を見渡して、
私は鞄を持って立ち上がる。

時間は3時を過ぎた頃。

部屋のドアに手をかけると、
思わぬ声が聞こえた。


―「待てよ。」


振り返ると、サングラスの彼。


何故か一緒に部屋を出てきた。