「でね、絵美ちゃんが結婚するんだって」

ストローで氷をくるくる溶かしながら、わたしは頬杖を付いていた。

「ふうん」

気の無い返事。でも、いつものことだからわたしも気にしない。

「やっぱり6月に披露宴するみたい。何着て行こうかな」

これには何も答えてくれない。まあいいけど。


窓の外を見ると、ピンク色の花びらが舞っている。
もう春なんだなあ。

目の前にいる啓介を見やると、一生懸命雑誌のページをめくっている。
何を読んでいるんだろう。そんなに面白いのかな。

「ふふ、絵美ちゃんピンク色のドレスとか似合いそう」

少し大人びた少女の顔を想像して、思わずにやけてしまった。
あれからもう10年かあ。

ん?ということは・・・。

カラン、と氷が溶けてグラスとぶつかる音に驚いたのか、啓介が顔を上げた。

「あ」