《ガアァァァッッ!!》




もはや自我を無くし、ただの獣のように襲いかかる妖狐達。

それは狐の形をした、黒い炎だったのだ。





「…幾霽相を生きたというのは嘘か……。




身体を亡くし…魂だけがこの世をさまよっていたとは……。」


炎尾は、目の前の黒い狐火達を睨み、ゆっくり前へ出た。



「…炎尾様………。」


五穂は怯え、微かに震えていた。
無理も無い。
これほど強大な妖怪達を前にして、まして彼女は人間。
恐れない筈が無かった。







「…五穂…安心しろ…。

お前は、何が有ろうと、俺が守ってみせる…。」


炎尾が囁くように優しい声で言った。



姿形は違えど、この声、この温もり。
間違える筈が無い。

お優しい、主君……。