「着いたよ」



ブブブ、ブブブ、・・・・・・


バイクが止まると、エンジン音だけが響いた。


夜風が音を通し、よく反響させている。


蓮山がキーを回すと、一瞬で静かになった。

まるで別世界に切り替わったみたいに。



着いた場所は、

公園のように草木は手入れされているけれど、公園ではない。

広い土地。

空き地でもない場所。



蓮山が手を出してきたが、ユリ子は払いのけて、軽やかにバイクをおりた。



「運動神経、悪くないんだな」
さっき、転(こけ)そうになってたけど。


「えへへ」

蓮山が感心すると、ユリ子は嬉しそうに笑った。


やっぱりユリ子はお嬢様扱いされるのを嫌がっている。

「分かりやすいヤツ」


「え?」


「なんでもねぇよ。メットそこら辺に置いといて」


「あ、はーい!」

平気でその土地に踏み入れているから、大丈夫なんだろうけれど


ユリ子はドキドキしながら蓮山を追いかけた。


月明かりは蓮山の背中をはっきりと捉えていた。



虫の音が聞こえる。

初夏は夜が寒い。

ユリ子は両腕を擦る。

蓮山のポケットに入れられた手が目に入った。





手、繋いだらあったかいかな。



「はい。ここが俺の家」

「ひゃあ!あ、え?は、はい」


「?なに動揺してんの?」

「な、なにも?」

私ったら、なにしようとした?
ユリ子は熱くなる顔を押さえた。