椎名の口から屋敷と聞いて、
ユリ子は忘れかけていたことを思い出してしまった。
今日が最後の夜。
ユリ子は、
七夕の夜に相応しい、晴れた夜空を見上げた。
星が瞬いて光っている。
「なんだかんだ言ってお嬢様中心で動いているんです」
「え?周りがうるさくて、聞こえなかった」
「なんでもありません」
「なによ、それ。椎名」
「はい?」
「命令よ」
ユリ子がキッと椎名を睨み付ける。
「あのですね、」
ユリ子が睨みつけた先に、蓮山がいた。
椎名の声は、ユリ子に届かない。
「・・・・・・って、お嬢様?」
ユリ子が違うところにいっているのに気づいて、椎名は話を止めた。
視線の先を追う。
「女性の方もいらっしゃるのですね」
ユリ子と同じ洋服を身にまとっている。
これだとユリ子が目立つことはない。
椎名は少し安心した。
「なによ・・・・・・」
私のことは放って置いたくせに。
ユリ子は小さくつぶやいた。