―ニコニコ産婦人科病院―

「と、言うわけでして。何の因果か及川さんが、妊娠してまして」

病院に着いたあたし達は、若月先生を呼んでもらって、母さんに説明をしてもらうように頼んだ。

若月先生は、恭平が初めてここへ来てからのカルテを見せながら説明していった。

そして、今、説明が終わった。

「母さん……」

あたしは、母さんに話しかけた。

ドサッ。

と、母さんはそのまま床に倒れてしまった。

「母さんっ?」

「服部さん!」

あたしと、若月先生はあわてて母さんを抱き起こすと、母さんに呼びかけた。

母さんは、すぐ目を覚ました。

「あ、樹理。大丈夫だよ、ちょっと目眩がしてね」

若月先生は、母さんを支えながら移動させ、長椅子に横にさせて、安定剤を一本打ってくれた。

薬が効いたのか、母さんは眠りについた。

「お母さんに、妊娠の事を今まで全く話してなかったのですか?」

若月先生は、母さんが眠ったのを見計らってあたし達に聞いてきた。

「ごめんなさい。なかなか言い出せなくて、恭平と別れて自分の家に帰ると、どうしても母さんに話す勇気がでなかったの。母さんの顔見るのが怖くて、すぐ自分の部屋に入ってたの」

あたしは、素直に謝った。

「いや、樹理のせいじゃない。俺がもっと早く、対処しとけばよかったんだ。突然妊娠してるなんて誰だって驚くよな」

「特に君たちの場合はね。一緒に最初から立ち会ってないと、理解できない所があるよね」

若月先生は、恭平とあたしに座るように椅子を勧めてくれた。

「母さん、どう思ったかな」

「……」

「……あれが、普通の反応なのかな。母さんが極端なのかな。あれが、周りの人の反応だったら、絶対、恭平の妊娠はバレたくない。これから、もっと、もっと大変なのかな」

そしてあたしは、ふと思ってしまったのだ。

「若月先生は、どうしてあたし達にこんなに協力的なの?」


えっ?


と恭平も若月先生もあたしを見る。


え、聞いちゃいけないことなの?