と言って、母さんは、一口お茶をすすった。

あたしと恭平は、母さんの言い分をポカンと口をあけながら、ただ黙って聞いていた。

「あたしは、多分、大丈夫だと思うんだけど」

そう言って、あたしは、お茶をゴクリと一口飲んだ。

恭平もつられて、お茶をゴクゴクッと飲みほした。

「大丈夫じゃないんだよ。これから腹がボコッとでてくんだよ。学校なんて行けるわけないだろ……休学届でも出しときゃ、学校にはバレないね……」

母さんは、一人で何かを考えているらしかった。

「あたしは、ホントに大丈夫なの。問題なのは恭平のほうで……」

あたしは、恭平を見る。

「どうして、恭平さんは何にも言わなきゃ問題ないじゃないか」

「あのね、よく聞いてほしいんだけど……妊娠してるの……」

後の言葉を恭平が引き継いだ。

「俺なんです……」

沈黙。

沈黙。

母さんの反応を窺う。

「オホホホホ」

母さんは、突然笑い出した。

あたしと、恭平の背筋がピシッとなる。

「まぁ、今年は近年になく暑くてねぇ。もぉ、なにを言い出すのかと思えば、オホホホ」

「あ、いや、笑い事じゃなくて」

「なにを真面目くさった顔してんのさ。あ、もしかして、これ、スタードッキリカメラかい?どっかでカメラがまわってんの?」


ス、スタードッキリカメラ?


なに言ってんの?


言うに事欠いて、自分をスターと言ってるわけ?


「へぇ、こんな田舎にまで、撮影が来るんだねぇ。ほら、あれだろ?大木ドボンちゃんだろ?」


誰?


暑さに参ってるのは母さんの方じゃ……。


「お母さん、ボンドさんですよ。大木ボンドさん」

恭平が、個人名を小声で訂正する。

この母に、真実を分かってもらうのは、気が遠くなりそうで、あたしは目眩いがした。

「ゴホン。お母さん、ちゃんと聞いて下さい」

恭平は、もぅ一度話すことに神経を集中させた。