「どうして…こんな事するの?」

私は利琥を気にしつつ、香に目を向けた。


「あんたが、憎いから」

「私が優勝したから?…どうしてそれがいけない事なの?」



お互い熱くならないように、私は冷静に言葉を続けた。

「だったら話してあげるよ。…座れば?」


香は軽く息を吐いて傍に置いてあった椅子に座った。

私は利琥の近くにしゃがんだ。




「私もさ、昔…美少女コンテストに出場したことがあんの。どこの高校からでも参加出来たから」

…そうなんだ。



「…それで?」

「私の評価は完璧だった!…でも、ある女が卑怯な手を使って優勝したのよ!!」

「卑怯な…手?」



「審査員を金で釣ったの」

確かに…それはずるいよね、一生懸命頑張った人もいるのに。



……でも。

「でも、その人は次の年から出てないんでしょ?だったらもう優勝者を襲う必要なんて…―――」


「知らないわよそんなの!私は私以外の女が優勝するのが…そのコンテストが大っ嫌いなの!!…優勝した奴はみんな…っ、みんな幸せそうな顔してっ!!」



香はぽろぽろと涙を流し、叫んだ。

「…香、悲しかったんだね?」



香は一人でずっとこの悲しみに耐えてたんだ。


「……っ私だって…本当はっ……」

「香、私はずっと香の友達だよ?……それで良いじゃん。優勝とか、そんなのどうでも良いじゃん」


私は泣き崩れる香を優しく抱き締めた。




「ごめんなさい…っ……ごめんなさいっ…」