「あの…私、篠崎 香っていいます」
「聞いてないけど」
女は頬を赤らめたまま、上目遣いに俺を見る。
いや、ときめかねぇし。
「よかったら…アドレス教えてくれませんか?」
「は…?」
俺のアドレスを抜けぬけと聞き出そうとする女、香。
断ったのだが、強引に赤外線で交換させられた。
「お前、なに勝手なことしてんの?」
頭おかしい、この女。
「…霧野、利琥さんですよね?」
「あ?」
「私の学校で有名人ですよ、格好いいし優しいって」
香はくねくね身体を動かしながら、俺に笑いかける。
葉凪とは違う、超が付くほどのぶりっ子。
「そりゃどーも」
「そんな利琥さんと友達になったって知ったら、みんな羨ましがるだろうなっ」
いや、友達になった覚えねぇけど。
「じゃあ、まためーるしますねっっ」
香はにこにこ笑ったまま手を振って、去って行った。
まじ、なんなんだあいつ。