俺は祐樹から目を逸らし、再び視線を外に移した。


ここからじゃ中庭は見えない。

それは、今の俺にとって不幸中の幸いだった。



葉凪が他の男と喋っているところなんて見たくなかった。


それが…たとえ仲間でも。




「ふーん、じゃあ僕行くね」



「……ああ」

呟くように返事をすると、背中から祐樹の気配が消えた。






俺は最低だな。


つまらない事で、冷たくして。

仲間にも隠し事して。

この感情に気が付かないふりをして。





「…一体、なにがしてぇんだろうな」


窓から入ってくるやけに冷たい風が、頬を撫でる。




目頭が熱くなるのを感じて、慌てて瞬きをする。





全部自分がまいた種。


だけど俺は、この種を集めることさえ出来なくなっていた。