「おい、葉凪。俺の分はどうしたんだぁ?」
にやけた顔を抑えながら、寂しそうな背中に声をかける。
ビクッと肩を上げた葉凪が、ゆっくり振り向いた。
「ど、どうしているんですか!?」
目を見開いて、俺を凝視する。
そんな、人をばけもんみてぇに。
「どうしてって?」
葉凪に近付き、しゃがみ込む。
葉凪は少し頬を赤らめ、ふいっと目を逸らした。
「だって…っ、今授業中だし」
「ああ、お前が外にいんの見えたから追ってきた」
躊躇いもなくそう言って、葉凪の手からジュースを奪う。
んだこれ、甘そう。
「そう、ですか…」
「で?」
立ち上がって葉凪を言葉を待った。
「ごめんなさいっ…ありま、せんでした」
ペコッと頭を下げる葉凪。
…だよな、分かってる。
だって存在しねぇし、んな味。
……でも、
「んだよ、本当使えねぇな」
ちょっとだけ意地悪してみたくなって、
「役立たず、もういいや」
そう言い放っちまった事を俺は死ぬほど後悔する。