「祐樹…」
祐樹は顔を濡らしたまま、私を見た。
「葉凪」
祐樹の顔はどこかすっきりしていた。
「大丈夫?」
「これ、読んでたんだ」
祐樹は微笑みながら、ある物を私に渡した。
「え、これ……」
―――手紙だった。
封筒はなく、白い紙が綺麗に折られているだけの手紙。
『葉凪』
この独特な字体は、間違いなくお母さんの字。
私は祐樹を見た。
祐樹は微笑みながら、頷いた。
焦る気持ちを抑えて、手紙を開く。
私はゆっくり、一文字一文字…目で追っていく。
祐樹は何も言わず、自分のお父さんのお墓に水をかけ始めた。
静かな町外れに、水をかける音だけが響いていた。