祐樹は酷く動揺している。
その様子から、分かる。
祐樹はちゃんと覚えている。
「私のお母さんと―――」
「やめて、葉凪!!!」
私の言葉を遮って、祐樹は叫んだ。
「……分かってるよ、忘れる訳ないじゃん」
「…行くの?」
明日は…。
私のお母さんと、祐樹のお父さんの…命日。
「行かない」
祐樹は私に背を向け、冷たく言った。
「…どうして?」
「…明日、用事あるし」
そんなの、嘘でしょ。
「祐樹、ちゃんとけじめ…つけようよ」
祐樹はゆっくりこっちを向いた。
「けじめ?」
「祐樹…笑えてないでしょ、最近。私、気付いてるんだよ?」
祐樹は最近笑ってない。
笑っていても作り笑い。
それは、明日が近付くにつれて目立つようになった。
「ずっと気になってたんでしょ?」
「……」
祐樹は俯き、泣きそうになっていた。
「行こう」
「…嫌だ」
ふぅ、と溜め息を付くと祐樹は恐る恐るこっちを見た。
「けじめなんて…付けられない」
「え…?」
「僕たちは何にも悪くないのに!!どうしてっ…!」
祐樹はついに泣き出してしまった。