◆利琥◆


俺は病室で考えていた。


「葉凪、ごめんな」

そう呟いて目を閉じる。


迷いは無くなった。

もう、離さないから。





―――数十分前。



「こんにちは」


「え…、」


いつの間にか俺の前に突っ立ってる男。

見覚えのある顔。


「俺の事、覚えてるよな?」




「………彰」


俺は、こいつの妹に手を出した。




「…今更、復讐か?」


「さぁ、どうだろうな」

そう言って、彰は近くにあった椅子に腰を降ろす。




「わざわざこんなとこまで、ご苦労なこったな」


「ちょっと、話したい事があって」


「俺に?…何だよ」






「可愛いよな、お前の彼女」


彰はクスッと笑う。


「は?」


「葉凪、可愛いよ。耳元で囁くと顔が真っ赤になる。…あの顔、最高だよな」



「ちょっと待て。何でお前が葉凪の事を知って…」


「だって、葉凪のここに紅い印つけたの、俺だもん」

彰は人差し指で自分の胸の辺りを指す。