◆利琥◆



……何度も同じ夢を見た。

まぁ、あれが夢だったのかは分からないけど。



真っ暗な闇の中、俺は一人。

どこにも行けなくて途方に暮れてると、必ずあいつが現れる。


『葉凪』


俺の前に笑いながら立ってる葉凪の周りは、明るく輝いてる。


そして俺に手を差し伸べてくる。

でも、俺がその手に掴まろうとすると、葉凪はすっと手を引いてどこかに行ってしまう。


追いかけようとしても、足が動かない。



俺はまた一人…闇の中を彷徨う。

その夢を幾度も見た。



俺…今、どこにいんだよ?



まだ……伝える事、いっぱいあんだよ。

こんなとこでくたばって堪るか。


死にたくない。

まだ、死ぬわけにはいかない。





―――また、夢を見た。


いつものように闇の中にあいつがいて、笑ってる。

いつものように伸ばされる手。



『葉凪っ……!!』


そう叫んで。




―――ガシッ


いつもとは違う、掴んだ手。

その瞬間、俺の身体が浮いて…気を失った。